都市の楽器としてのストリートドラム/先祖帰りするHBB

まずは以下の動画から。

彼らをストリートドラマーと定義する。
ドラム構成はナベや一斗缶、プラスチックバケツ、カゴや瓶、シンバルを道に並べて(時には"置いて")セッティングしたもので、
ドラムセットを忠実に再現しているものもあれば、音のバラエティーや演奏しやすさを重視したものまで多様性がある。
スティックは通常のドラムスティックの場合もあるし、それに準じるもので代用する。
叩いているうちにどんどん定位置からずれていくので、足、紐、網などを用いて固定するか、演奏中にすかさず位置を修正する。
正直ドラムのことは分かりませんけど、手数を稼ぐ派、高BPM派、コンビネーション重視派など、従来のドラマーと同様にプレイスタイルは多様である。
音楽としての質は明らかに茶碗をちんちんお箸で叩くレベルを超越して、廃棄物を利用した現代都市の楽器へ変化している。
大都市でしか路上のビジネスとして成立しないのも都市の楽器という理由である。


「ドラムの音」ありきの音楽かと言えばそうともいえない。
原始的な打楽器である以上、所謂バンドサウンドとは異なる、人類の文化の根底にある民族音楽との親和性も高い。

ちょっと和太鼓のパフォーマンスを想起させる。

路上のパフォーマンスとしては、究極的にはヒューマンビートボックス(HBB)になっちゃう。
聴衆が、演奏者の出している音が何の音であるかを理解または想像できることができることがHBBの前提である。
口や鼻からの発声によってビートを刻む行為は、既に発明されたもの(ドラムやターンテーブル)とHBBによる擬音が聴衆によって結びつけられる。
これによって、受け手の音の解像度が実際のそれよりも鮮明になっていく。


人類学者や歴史家たちはしばしば、最初に作り出された音楽用の道具は打楽器であったろうと推測している。人類最初の楽器は人間の声だったと思われるが、手足、それから棒、石、丸太といったものがほぼ間違いなく音楽の進歩の次の一歩であった。 
打楽器(wikipedia)

ドラムやターンテーブルで出すべき音が、原始的な楽器である「声」による擬音に先祖帰りして代替され、それが聴衆に受け入れられているのも結構面白い。

なんつって。