日本を降りる若者たち
- 作者: 下川裕治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/16
- メディア: 新書
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しかし、タイはなにもしなくてもいいんだ、と感じた場所だ。気が向いたときにでかけて疲れたら、ダラダラする。もちろん節約は重要だよ。むしろ節約すら楽しいんだ。安さのバリエーションがある。例えば食事で安さを追い求めてみれば飽きがこなくて旨さ、量で満足できる選択枝が日本とは比べられないほど有る。観光地周辺では、たまにだまそうとしてくる怪しいおっさんやぼったくりタクシーなんかも経験して人間不信になりそうになるけど、あの雑踏も排気ガスや暑さもむしろ心地よく、日本で追われていた沢山の事がすっとんだ。日本で誰もが感じている閉塞感、生き辛さ、ストレスから解放してくれるユルい空気があそこにはある。
この本はそんなタイの雰囲気に「沈没」し、日本で短期集中である程度のお金を稼ぎ、安宿に泊まり徹底的に出費を切り詰めて一年の多くをタイで何もなさずに過ごす人々を描く。筆者はそんな人々を取材し、彼らをひきこもりに模して「外こもり」と読んでいる。
一見して、彼らは海外に行く為に住み込みで働く分、引き蘢りよりはアクティブなんだけど心に抱えているものは同質ではないかと思う。タイのあの空気は開放感を与えてくれる。日本は効率化、高速化が進む一方で人間関係はぎすぎすしていくばかりだし、タイの人々のおおらかさ、適当さ、素朴さを感じると今までのこだわりがなんだったのかと思う。筆者は「外こもり」の若者達を肯定的には捉えていないようだが、彼らだけの特有の症状ではなく今日本に住む僕らが潜在的に有している症状だ。沈没するポテンシャルはみんな有している。あそこでは、もういいやってプッツンして、日本で抱えていた問題を放棄するスイッチがいつ誰に入ってもおかしくない。挫折して落ち込んで、でもこれじゃ駄目だって思って立ち向かう為のなんでもいいから心の支えが彼らには必要なのか。リフレッシュできる反面どっぷり使ってしまう可能性もある場所がバンコクなのかもしれない。
3月にアメリカへ行くけれど、タイと同じような気分で行くと面食らうのだろうな。英語全然勉強してねえ。