若き数学者のアメリカ

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

少し前に流行った「国家の品格」の著者、藤原正彦が1970年代アメリカの大学で教職についていた時のエッセー。作品自体は古く、「国家の品格」が売れたからか最近文庫本が復活していたようだ。
数学者としての才能を武器に、鼻息あらくアメリカに乗り込んでいった著者は、はじめは日本人のアイデンティティから来るアメリカへの漠然とした抵抗意識があったり、ノイローゼになったりする。やがて温かな人々との交流から充実した生活を送っていく。アナーバーやボルダーでの暮らしぶり、当時のアカデミアでの研究環境や、アメリカという国やそこに住む人々についてのアメリカ論が興味深い。 

著者はミシガン大学から途中でコロラド大学へと教員のポストをゲットして移ったわけなんだけども、興味を引いたのは、当時のアメリカでの、大学で専門性の高い学問を修めた学生や学者の就職難が、現在の日本のそれと類似している点だ。数名の募集に何百倍の志願者が殺到する。アカデミックでは安定したポストに対して博士課程修了者数が過剰すぎるし、企業も彼らの専門性の高さ故に敬遠する様は本当に似ている。

今年就職活動を控えるドクターの先輩は准教授と共にトロントへ学会へいっている。帰りには准教授の前のラボによるとかでミシガン大学のあるアナーバーに滞在するそうです。うらやましい。自分は夏の学会の準備で遠出できそうにありません。


春の写真。ミシガン大学ではファンキーな反戦デモが行われていた。