生命科学に携わる学生必読の「タンパク質の一生」

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)

我々のからだは多数の細胞の集合体である。小さな細胞の中でゲノム上にコードされた遺伝情報に基づきタンパク質が合成され(セントラルドグマ:DNA→RNA→Protein)、個々の細胞が協調的に活動することで私たちは生きている。分子生物学的なミクロな視点から見れば、1つの細胞それ自体が小宇宙であり、膨大な数のタンパク質の働きによって細胞機能が維持されている。小宇宙の主役であるタンパク質には、その誕生から成長、そして死などのストーリーがある。決して生物のきまぐれではなく、細胞内の数千〜10数万種類のタンパク質は機能的、空間的、時間的な秩序を維持している。
細胞生物学の基本と成るタンパク質の役割からBSEアルツハイマー病との関連まで広く浅くまとまっている。この分野の最前線に立つ人物が読者に解説してくれているのは素晴らしい。
しかし、内容はやはり文系の学生にはちと厳しい気がする。どちらかといえば、理系の大学1、2年生の世界観を広める本だ。